狂気文書 アーカイブ | 『狂気の海』: 公式 HP

狂気文書 アーカイブ

SARABA01.JPG風呂場に二人の女性がいる。ひとりは洗い場に置かれた椅子に腰掛け、上半身を屈めて水の張っていない空のバスタブに首を突っ込んでいる。もうひとりはその女の後ろに覆いかぶさるようにして立ち、女の髪をシャワーですすいでいる。二人とも着衣のまま。その様子がごく短い引きと寄りの2カットで示されると、ジャンプカットして、同じ風呂場の中で、シャワーを掛けていた方の女が掛けられていた方の女のうなじをタオルで拭いてやっている。

913da846.jpg『空の飴色』〜物語はどこから来るのか〜
  にいやなおゆき 

「にいやさん、うち今引っ越し中で『赤い激流』見れないんです、録画してくれませんか」という電話がかかってきたのは三年前だった。
浅野学志とはCS仲間であった。あったと過去形になってしまうのは、私のCSアンテナは非情な大家さんによって破壊されてしまったからだ。
いや、単に大家さんがアパートの周りの植木を剪定してて、切られた枝がアンテナの上に落下し、あのパラボラアンテナ(BS、CS加入者の誇りの象徴である)がグチャグチャに潰れてしまった、という事なのだが。 しかしあの頃はよく浅野くんと電話してましたね。『ドリフの大爆笑!』の宇宙船のギャグがどうの、『みなしごハッチ』の今週の話は凄いぞ、とか。まったくなにやってんだか......。しかし、我々のCS談義で最も盛り上がっていたのは、主演・水谷豊、宇津井健  演出・増村保造、國原俊明、瀬川昌治脚本・安本筦二、鴨井達比古、音楽・菊池俊輔らの豪華メンバーによって作られた、大映テレビドラマ『赤い激流』だったのです。
浅野くんの『空の飴色』を観て思ったのは「ああ、これ『赤い激流』じゃん!」でした。

02.jpg井川さんから質問をいただきました。『亀の歯』『巣』『アカイヒト』の三作品には、どれも兄と妹が登場し、さらに妹は死んでしまうか、死病にとり憑かれている、という共通する設定がある。なぜその設定を繰り返すのか、そのこだわりは何なのか、宮沢賢治の『永訣の朝』なども関連しているのか。といった質問でした。  この兄と妹の設定の繰り返しは、私自身も、作るうちに気付いてきたことです。この三作品の他にも、『あいな』("兄"の意 )や、いま制作過程にある自主映画にも、相も変わらず兄と妹が登場します。これらは全て、私の兄、私の母と伯父の存在、そして兄と妹という関係性への個人的な興味に因ることと思っています。

123.jpg『アカイヒト』に関する前の文章に対し、井川さんから3つの質問をいただきました。以下、その返答です。  なぜ8mm・白黒で撮ろうと思ったのか、いま思い出す限りでは、いままでやったことがないことをやってみたかったから、だと思います。ですので、シナリオを書く前から漠然と決めていました。以前、臼井勝さんから8mmカメラをいただいていて、たまにファインダーを覗いては興味を募らせていた、ということもあります。編集・発表は『アカイヒト』以後となった『あいな』という短編を撮った際に8mm・白黒の画面に興味を持ち、その画面とより近づきたい、増幅させたい、という意識を膨らませていたこともきっかけの一つでした。同じカメラで友人の家族を撮ったのですが、これはカラーがメインで、その画面からは、懐かしさ生々しさ高めの人肌といった印象を受けていたので、『アカイヒト』で、主人公が生の希望に触れる一瞬だけカラー、あとの脈々と続く世界は白黒としよう、と決めたきっかけとなりました。

20080623111441.jpg アカイヒト』は、美学校映画祭スカラシップ作品として製作されました。  制作は植岡喜晴氏にお願いしました。ただ、この作品が結果的に予算オーバーし、ほぼ自主製作となったことは、制作が植岡さんであったこととは無関係です。スタッフは、美学校2期の数人が中心となり、プロの美術さんである黒川通利氏、そして美学校6期の数名も結集しました。キャストは、ほぼあて書きだったこともあり、まずはお願いし、比較的スムーズに決まりました。  撮影は、城ヶ島、足尾、渡良瀬、鎌倉、千葉、都内数カ所にて行われました。城ヶ島の洞窟の撮影時、夜明け前、潮が引き洞窟から水が無くなる瞬間を待ち、準備を開始しました。ゼネやドラムを崖からバケツリレーで降ろし、洞窟の中へ。ロケハン時に初めて出逢った、かつて見たこともない生き物たちがやはり今日も同じ姿勢でそこに居ましたが、照明をたくと音もなく一斉に姿を隠したので、それ以後"あいつら"のことは禁句、役者の人たちには終始内緒、「天井に気をつけてください...」とだけ一言、申し上げました。